Q.将来の万が一のことが気になる年齢になってきたので、そろそろ遺言書を作成しようかな、と思っています。でも、せっかく作った遺言書をどうやって保管しておけば良いのでしょうか?
A.これから遺言書を作成されるのでしたら、遺言書の保管の点でも安心・安全な公正証書遺言が最もおすすめです。
せっかく想いを込めて作った遺言書も、ご自身の元気なうちにその内容がご家族に知られてしまってもめ事の原因になったり、偽造、変造、破棄などをされるおそれもあります。
逆に、わかりにくい場所に隠しておくと、ご自身の亡き後にご家族の誰にも見つけてもらえない、というおそれがあります。それではせっかく作った甲斐がありません。
その点、公正証書遺言の場合には、原本は公証役場に保管されています。
(ちなみに公正証書遺言を作成後に遺言者に手渡される遺言書は、原本ではなく、原本と相違ない旨の公証人の証明が付された正本です。)
公証役場での保管期限は規則で決まっており、原則として20年ですが、特別の事由により保存の必要がある場合にはその事由のある間保管しなければならないことになっています。
実務上は、遺言者の生存が推測できる限りは特別の事由ありとして保管し続けることになっており、遺言者がおよそ120歳になる位までの年数は保管しているようです。
また、東日本大震災で公証役場に保管されていた書類が危うく津波で流されそうになった経験を踏まえて、全国の公証役場で「二重保存システム」という、公正証書遺言の原本をスキャナーで読み取って、そのデータを別の安全な場所に保管するというシステムの運用も開始されました。
また、公証役場では、亡くなられた方が公正証書遺言を残されているかどうかの確認(遺言検索)をすることもできる、というメリットもあります。
(※遺言検索システムについては、13.公正証書遺言の検索システムについての項目で詳しくご説明しておりますので、そちらをご覧ください。)
以上の点からすれば、遺言書の保管という観点からも、公正証書遺言にされることが最も優れていると思います。
【自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は?】
これに対し、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、ご自身で遺言書を保管する必要がありますが、ご健在の時はご家族に容易に発見されず、かつお亡くなりになった後は発見してもらいやすい、というニーズを両立させる必要があります。
ご自宅内であれば、以下のような場所でしょうか。
■金庫の中
■机の引き出し(鍵付きが望ましい)
■タンスの引き出し
■仏壇
一方、ご自宅外であれば、以下のような方法が考えられます。
■銀行の貸金庫に預ける
■遺言執行者(となるべき者)に預ける
■後見人に預ける
■専門家(司法書士など)に預ける
■友人に預ける
いずれにせよ、貸金庫に預ける場合には、その旨を伝えておく必要がありますし、他人に遺言書を預ける場合には、その遺言書をいざという時に確実に利用できるようにするため、死亡時の連絡方法を整えておく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
はしもと司法書士事務所
代表 司法書士・相続診断士・民事信託士 橋本浩史(奈良県司法書士会所属 第471号)
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