43.相続人間の公平を図る仕組み その2 特別受益について

Q.先日、父が亡くなり、法定相続人は兄と私の兄弟2人です。相続財産は全部で1億円あります。
ところで、兄は父が生きているときに家を建てる資金を4,000万円援助してもらっているのですが、相続財産はどうなるのでしょうか。単純に兄と同額、というのでは納得できないのですが…。

 

A.生前に贈与を受けていた者は、特別受益として相続財産に加算して相続財産を算出し、分割した後に特別受益分を差し引いて具体的相続分を算出します。これにより、相続人間の実質的な公平を図ることができます。

 

今回も、前回(42.相続人間の公平を図る仕組み その1 寄与分について)に引き続き、相続人間の実質的な公平を図るための制度についてのお話です。

 

今回のテーマである、特別受益とは、被相続人(亡くなられた方)から生前に遺産以外の特別な財産を受け取っている場合の、その「遺産以外の特別な財産」のことです。

 

このような場合には、相続財産にその特別受益財産の価額を加えてから各相続人の具体的相続分を計算し、特別受益者についてはその特別受益分を差し引いて具体的相続分とします。

 

この特別受益も、前回ご紹介した寄与分と同様に、相続人間の実質的公平を図るための制度です。

 

【特別受益の対象となる場合】

 

・独立して事業を始めるときに開業資金を出してもらった。
・家を建てるときに多額の資金を援助してもらった。
・私立大学の医学部への進学にあたって多額の入学金や授業料を出してもらった。
・結婚に際して多額の持参金をもらった。 など

 

【特別受益の具体的計算方法】

 

(事例)
上記の相談者様の事例で考えます。

 

相続財産=1億円+4,000万円=1億4,000万円
お兄様、相談者(弟)様共に、各1億4,000万円×2分の1=7,000万円
・お兄様の具体的相続分=7,000万円-4,000万円3,000万円
・相談者様の具体的相続分は7,000万円のまま

 

※前回(42.相続人間の公平を図る仕組み その1 寄与分について)お話しした寄与分と比較していただきますと分かりやすいですが、相続分の計算方法がちょうど真逆になっているのが特徴です。

 

・寄与分…相続財産から寄与分相当額を差し引いて、分割後に加える

・特別受益…相続財産に特別受益相当額を加えて、分割後に差し引く