35.除籍(謄本、抄本)について

今回は、前回の戸籍謄本・戸籍抄本に引き続き、除籍謄本・除籍抄本についてご説明いたします。

※前回分は、34.戸籍(謄本、抄本)についてをご参照ください。

 

【除籍簿と除籍謄本・除籍抄本について】

 

ある人が何らかの理由により、記載されている戸籍簿の中から抜けることを除籍といい、1つの戸籍簿に記載されている方が全員除籍されて(抜けて)、言わばもぬけの殻になった戸籍簿のことを、除籍簿といいます。

 

そして、この除籍簿の全部についての写し除籍謄本除籍全部事項証明書)、除籍簿内の一部の人についての記録の写し除籍抄本除籍個人事項証明書)といいます。

 

※「除籍謄本」や「除籍抄本」は、除籍簿が紙の簿冊である場合の呼び方で、コンピュータ化されたものは正式には「除籍全部事項証明書」「除籍個人事項証明書」と呼んでいます。ただ、「除籍謄本」や「除籍抄本」の方が馴染みがあり分かりやすいため、今でも便宜上そう呼ばれているのは、戸籍の場合と同じです。

 

【除籍になる理由】

 

除籍になる、つまり記載されている戸籍簿の中から抜ける理由には、以下のようなものがあります。

 

死亡…どなたにも起こりうる、一番分かりやすい理由です。人の身分上の事項の変動の最たるものです。

 

婚姻…ご結婚されることによって、従前の(親の)戸籍を抜けて、配偶者の方と新しい戸籍簿が作られることになります。

 

離婚…逆に離婚された場合には、筆頭者でない方は、筆頭者である元配偶者の戸籍から抜けるという形になります。(筆頭者の方はそのままです。)

 

その後は、ご結婚前の(親の)戸籍に戻る(これを復籍といいます)のが原則ですが、復籍すべき戸籍がない場合や、新戸籍をご希望される場合には、自らを筆頭者とする新戸籍が作成されることになります。

 

転籍…転籍とは、本籍地を変更することです。

 

同一市町村内での転籍の場合には、戸籍簿の記載内容を変更するだけですが、市町村が変わる場合には、そもそも戸籍簿を保管すべき市町村が変わりますので、従前の戸籍から全員が除籍とされます。
そして新しい本籍地にて新しい戸籍簿が作られることになります。

 

分籍…在籍する戸籍から分離独立して、新たに単独の戸籍を作ることです。戸籍筆頭者及びその配偶者以外の方で、成人であれば誰でも分籍をすることができます。当然、従前の戸籍からは除籍されます。

 

【なぜ、除籍謄本を取らないとダメなのか?】

 

ではなぜ、相続の手続では、被相続人(亡くなられた方)の戸籍謄本だけでなく除籍謄本をも取る必要があるのでしょうか?

 

それは、上記のような理由で除籍になった後、新たな戸籍簿が作成されるにあたって、従前の戸籍簿の記載事項のすべてが書き移されるわけではないからです。

 

戸籍簿の記載事項のうち、どれが書き移されて、どれが書き移されないのかについては、戸籍法の規則で細かく定められています。

 

例えば、既に除籍された方についての事項は、新戸籍簿には書き移されませんので、ご結婚されたお子様についての事項は、最新の戸籍謄本には現れません。このような場合に従前の除籍謄本を取得することで、そのお子様についての記載事項を確認します。

 

【除籍簿の保存期間】

 

戸籍簿については現に効力を有する事項を扱っているため、保存期間を気にする必要はありませんが、除籍簿の場合には戸籍法の規則で保存期間が定められています。

 

それは、戸籍簿から除籍簿となった時(つまり、戸籍簿に記載されている方全員が除籍された時から150年とされています。

 

もっとも、これは平成22年(2010年)に戸籍法の規則が改正されて長くなったものであり、それ以前は80年でした。従いまして、改正前に80年が経ってしまった除籍簿は、廃棄処分されている場合もあります。


また、地域によっては戦災や災害などの影響で除籍簿が失われている場合もあります。

これらの場合には、上申書を作成する形で手続きを進めることとなります。

(参考)25.上申書という書類について その1 他に相続人がいないことの証明

 

はしもと司法書士事務所では、相続手続きにおける除籍謄本の取得をお手伝いさせていただきますので、お気軽にご相談ください。