34.戸籍(謄本、抄本)について

不動産の相続登記をはじめ、相続関係の手続きには必ず戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本といった、戸籍関係の書類が必要になります。

 

一方で、これら戸籍関係の書類はその記載内容が大変分かりづらいことや、記載方法に独特の約束事が多々あるため、私ども司法書士がお客様から最もよくご質問をいただく書類でもあります。

 

今回は、その難解な戸籍関係の書類のうち、最も根幹をなす戸籍謄本・戸籍抄本についてご説明いたします。

 

戸籍関係の書類のお話を本格的に始めますと、それこそ本が1冊書けてしまうくらいの量になってしまいますので、ここでは大まかなお話しかできませんが、しばらくの間お付き合いください。

 

【そもそも戸籍って何?】

 

人の出生、結婚、離婚、養子縁組、離縁、死亡などの身分上の事項の変動を記録した帳簿のことを戸籍簿といい、この戸籍簿の全部についての写し戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、戸籍簿内の一部の人についての記録の写し戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)といいます。

 

※「戸籍謄本」や「戸籍抄本」は、戸籍簿が紙の簿冊である場合の呼び方で、コンピュータ化されたものは正式には「戸籍全部事項証明書」「戸籍個人事項証明書」と呼んでいます。ただ、「戸籍謄本」や「戸籍抄本」の方が馴染みがあり分かりやすいため、今でも便宜上そう呼ばれています。

紙の簿冊式の戸籍謄本の見本

縦書きで、数字は漢数字で記載されています。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンピュータ化された戸籍全部事項証明書の見本

横書きで、数字はアラビア数字で記載されています。


※なお、上記の戸籍謄本・戸籍全部事項証明書の画像は、フリー百科事典Wikipediaさんに掲載のものを引用させていただきました。ありがとうございました。

戸籍簿の記録は本籍地の市区町村の役所に保管されており、現在では多くの市区町村でコンピュータにより管理されています。私たちがその戸籍謄本または戸籍抄本を請求すれば、役所はそれを受けて該当する戸籍簿を検索し、その記載内容の写しを作成して交付しているわけです。

 

戸籍簿は、本籍地と筆頭者を基準として、原則としてご夫婦と(未婚の)お子様を1つの単位として作成されます。お子様がご結婚されるとその戸籍を抜けて、配偶者の方とともに新たな戸籍簿が作成されてゆくことになります。

 

また、死亡などの理由によってもその戸籍から抜けることになります。この、戸籍から抜けることを除籍といいます。(除籍につきましては、別途ご説明いたします。)

戸籍簿は、その戸籍の中に記載されている方がお1人でも存在する限り、その効力を有し続けます。

 

【本籍地とは…住所との違い】

 

本籍地とは何かと言われたら、戸籍に記載される人が自ら任意に定める場所のこと、という説明になります。

 

一体何を言っているのか?と思われるのも無理はありません。
現在の戸籍法は昭和23年(1948年)に施行されたのですが、それ以前の旧戸籍法では、本籍地は基本的には家の所在地(住所)でした。

 

現在ではその制約が撤廃され、本籍地は日本国内でありさえすればどこでも良く、単に戸籍簿を保管する市区町村を決定し、戸籍簿を検索する取っかかり(インデックス)としての役割しかないのが実情です。

 

※そのため、本籍地を「皇居」(東京都千代田区千代田1番)、「大阪城」(大阪市中央区大阪城1番)、「阪神甲子園球場」(兵庫県西宮市甲子園町1番)、とされている方が相当数おられる、と言われています。

 

したがいまして、本籍地は住所とは全く関係がないのですが、さまざまな手続に戸籍謄本・抄本が必要となるため、本籍地がご自宅の住所から離れたところですと、郵送でも請求できるとはいえ、取り寄せるのが面倒ですので、ご自宅の住所と一緒にされることが多いかと思います。

【戸籍謄本と戸籍抄本の使い分けは?】

 

私たち司法書士がお客様からご依頼を受けて戸籍関係の書類を収集する場合には、必ず謄本(全部事項証明書)を収集します。

 

不動産の相続登記など、相続手続きの場合には、相続人が誰であるかを確定させることが重要であり、戸籍簿に記載されている方全員を把握する(それ以外には相続人がいないことをも確定させる)必要があるからです。

 

一方で、例えば旅券(パスポート)の申請などでは、抄本(個人事項証明書)を提出すれば良いとされています。この場合はご本人様の情報だけが必要なのであって、ご家族の他の方の情報は必要ないからです。

 

というわけで、お客様がご自身で戸籍関係の書類をご準備される場合には、謄本(全部事項証明書)の取得をお願いいたします。

また、はしもと司法書士事務所でも、戸籍関係の書類の取得をお手伝いさせていただきますので、お気軽にご相談ください。