27.相続登記における権利証の必要性

Q.不動産の売買の時は、登記には売主の権利証が必要ですよね。相続の登記の時にもやっぱり権利証が必要なのでしょうか?

 

A.原則として、相続の登記の申請には権利証(登記済証または登記識別情報)の提出は不要です。 ただ、例外的に権利証の提出が必要となる場合もあります。

 

そもそも、不動産登記の申請で権利証(登記済証または登記識別情報)を提出するのはなぜなのでしょうか?

 

それは、登記の申請というのは、当事者の双方が共同して申請することで、登記申請の内容に沿った不動産についての権利の異動が真実に合致していることを担保しています。
権利を得る者だけでなく、権利を失うことになる者も申請に参加させれば、虚偽の登記が行われるおそれは格段に少なくなるからです。

 

さらに、登記名義人の本人しか所持していないはずの権利証をあえて提出させることで、登記申請によって権利を失うことになる者の本人確認と、申請の意思の確認をすることができ、登記内容の真実性をより一層担保させることになります。

 

ところが、相続を原因とする所有権移転登記の場合は、この当事者の双方が共同して申請、というやり方が当てはまりません。なぜなら登記簿上の名義人の方が亡くなられており、共同しようがないからです。

 

そこで、相続の登記の場合には、相続によって所有権を取得された方が単独で申請をするという形をとります。代わりに、被相続人(亡くなられた方)や相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本、住所証明書などの、役所が発行した証明書を添付させることで、登記内容の真実性を担保しています。

従いまして、相続の登記では原則として権利証(登記済証または登記識別情報)の提出は不要です。

 

一方、これらの役所が発行した証明書が、保存期間経過に伴って廃棄処分されていたり戦災、災害などの理由で消失している場合などの理由で添付できないケースがあります。この場合には上申書という書類を法務局に提出するのですが、その添付資料として権利証を提出することを求められるのが通常です。
権利証は登記簿上の名義人が所持しているのが通常であるため、その権利証の提出があるということは、登記簿上の名義人本人(の相続人)からの申請に間違いない、ということで、登記内容の真実性を担保することになるからです。

 

※この、上申書とともに権利証の提出が必要なケースについては、以下のページに詳しく掲載していますので、ご参照ください。
25.上申書という書類について その1 他に相続人がいないことの証明

 

26.上申書という書類について その2 住所の沿革がつかない場合 


最後までお読みいただき、ありがとうございました。