16.不動産取得税について その2 さまざまな軽減措置

前項(15.不動産取得税について その1 税についてのあらまし)では、不動産取得税の基本的な仕組みを見てきました。

 

一方で、不動産取得税にはさまざまな軽減措置が講じられています。
軽減措置の適用があるかないかによって、税額が数十万円単位で異なってきますので、皆様にとりましては、むしろこの軽減措置の方が重要かと思います。
ここでは、各種の軽減措置を規定した特例を見ていくことにします。

 

【新築住宅に対する課税標準額控除の特例】
一定の要件を満たした新築住宅を取得(増・改築を含む)した場合には、課税標準額から1,200万円を控除した額をもとに税額が計算されます。

 

不動産取得税額=(課税標準額-1,200万円)×3%
※なお、長期優良住宅の場合は、控除額が1,300万円になります。

 

〔一定の要件とは…〕
◎床面積が50㎡以上240㎡以下(マンション、アパートなど貸家は40㎡以上240㎡以下
※マンションなど区分所有建物の場合は、専有部分の床面積に加えて、共用部分の床面積を共有持分で按分した面積を合算して判定します。
住宅の用に供すること

 

【中古住宅に対する課税標準額控除の特例】
一定の要件を満たした中古住宅を取得した場合には、課税標準額から下記の金額を控除した額をもとに税額が計算されます。

 

不動産取得税額=(課税標準額-下記控除額)×3%

 

〔控除額〕
取得した中古住宅が新築された日によって異なります。
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 420万円
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 450万円
平成元年4月1日~平成9年3月31日 1,000万円
平成9年4月1日以降 1,200万円

 

〔一定の要件とは…〕
◎床面積が50㎡以上240㎡以下
※マンションなど区分所有建物の場合は、専有部分の床面積に加えて、共用部分の床面積を共有持分で按分した面積を合算して判定します。
◎個人が自己の居住用とするため取得
昭和57年1月1日以降に新築された住宅であること
昭和56年12月31日以前に新築された住宅の場合には、新耐震基準に適合することの証明がなされたものであること

 

【住宅用の土地に対する税額軽減の特例】
一定の要件を満たした住宅用の土地を取得した場合に、税額から一定額が軽減されます。
住宅(建物)の場合が税額計算の基礎となる課税標準額を小さくしたのに対し、こちらは税額そのものを直接的に減額している点が異なっています。

 

不動産取得税額=課税標準額×3%-下記軽減額

 

〔一定の要件とは…〕
下記の1.~7.のうちのいずれかに該当する必要があります。

◎新築住宅用の土地の場合

1.土地の取得後3年以内に、その土地上に特例適用対象となる住宅を新築すること
※親が土地を取得し、子が土地上に住宅を新築する場合でも適用されます。
2.特例適用対象となる住宅を新築して1年以内にその敷地を取得すること
3.特例適用対象となる新築未使用の住宅とその敷地を、その住宅の新築後1年以内に取得すること
4.土地の取得者が自らの居住用として、土地の取得後1年以内に、その土地の上にある新築未使用の住宅(特例適用対象となるもの)を取得すること
5.自らの居住用として、新築未使用の住宅(特例適用対象となるもの)の取得後1年以内に、その敷地を取得した場合

 

◎既存(中古)住宅用の土地の場合
6.土地の取得者が土地の取得後1年以内に、その土地上にある自らの居住用既存住宅(※)を取得した場合
7.自らの居住用既存住宅(※)の取得後1年以内に、その敷地を取得した場合
(※)上記の、中古住宅に対する課税標準額控除の特例の要件に該当する既存住宅のことです。

 

〔軽減額〕
次の1.か2.のうち、いずれか多い方の額になります。
1.45,000円(税額が45,000円未満ならその額)
2(土地の㎡単価の2分の1)×(住宅の床面積の2倍)×3%
※住宅の持分を取得したときは、それぞれに持分割合を掛けて比較します。
※「住宅の床面積の2倍」は、200㎡を超える場合は200㎡として計算します。


【具体例で実際に税額を計算してみると…】

設例.Aさんは平成26年4月に土地付きの新築住宅を購入しました。

土地は面積が130㎡、価格(評価額)は2,600万円、

住宅は延床面積が150㎡、価格(評価額)は1,400万円です(長期優良住宅ではありません)。

Aさんの納税額はいくらでしょうか。


[計算結果]

住宅:(14,000,000(評価額)-12,000,000(控除額))×3%=60,000円(税額)

土地:上記税額軽減前の税額=26,000,000(評価額)×1/2(宅地特例)×3%=390,000円

軽減額の計算:(26,000,000×1/2)÷130×200(㎡)×3%=600,000円→45,000円より多いため、上記軽減額の2.の方を適用

土地の軽減後の税額=390,000-600,000=0未満となるため0円

よって、住宅60,000円、土地0円で、不動産取得税の合計額は60,000円となります。