19.(新着情報)斜線を引いた遺言書の効力は?

自分で作成した遺言書に、自ら赤いボールペンで文面全体に斜線を引いた場合、その遺言書の効力は一体どうなるのでしょうか?

 

この点が争われていた事件について、最近(平成27年11月20日)、最高裁判所で判決が出されて決着がつきました。

 

結論から申しますと、自ら故意に遺言を破棄したものといえ、その遺言書は無効である、という判決でした。

 

争いになった事案を簡単にご説明いたします。

 

平成14年(2002年)にある男性が、2人いる子(長男と長女)のうち、「長男にほぼ全ての財産を相続させる」、という内容の遺言書を残して亡くなられました。

(ちなみに、遺言書の作成日は昭和61年(1986年)でした。)

 

ただ、その遺言書には左上から右下に向けて赤いボールペンで1本の大きな斜線が引かれていました。

 

そこで、長女の方が長男を訴えた、というわけです。

 

長女の主張これは遺言書の記載内容を撤回するという父の意思の表れなので、遺言書は無効だ。

 

長男の主張確かに赤ボールペンで斜線が引いてあるが、それでも遺言書の文字は読める状態なのだから、父が遺言を撤回したとはいえず、遺言書はなお有効だ。

 

最高裁判所は、今回、長女の主張を受け容れて、遺言書の文面全体に赤ボールペンで斜線を引く行為は、その行為の一般的な意味からして、その遺言書の全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当(だから無効)、としました。

 

今回の最高裁判決は、一般常識からすれば納得のいく結論に落ち着いたような気もしますが、その前の第1審と第2審は、むしろ逆に長男の主張を受け容れた判決(遺言書は有効)をしていました。

 

遺言をしたご本人は他界されており、残された方にとっても、それだけ解釈が微妙な事例だったといえます。

 

また、今回の事案では、最初の第1審の提訴から、今回の最高裁判決に至るまで、実に13年もの歳月をかけて争われた、という重い事実を忘れてはなりません。

 

このような事態を招かないように、やはり遺言書は公正証書遺言にされること、遺言の撤回や内容の変更などは、元の遺言書を破棄して改めて作成し直すなど、残された方にとっても明確になるようにされることをおすすめいたします。

 

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