7.予備的遺言のすすめ…相続人が先に死亡するリスクへの備え

Q.私たち夫婦には子供がいません。そこで、夫婦でそれぞれ遺言書を作っておけば良いと聞きましたが、私よりも先に妻(夫)が亡くなってしまった場合には、せっかく作った遺言書は無駄なものになってしまうのでしょうか。

 

A.確かに、遺言書を作った時点ではご夫婦のどちらが先に亡くなられるかは神のみぞ知るところですね。

 

民法の規定では、遺言である財産を受け取るとされた方が、遺言者よりも先にお亡くなりになっていた場合には、遺言書の該当の記載の部分のみが無効となります(遺言書自体が無効となるわけではありません)。つまり、その財産に関しては、相続するべき人がいない状態となるわけです。

 

その結果、その財産につきましては、遺言書がないのと同じ状態となり、相続人のうちどなたが受け取るのかを遺産分割協議で決定することになります。

 

では、何か良い対策はあるのでしょうか。

上記のようなケースにあらかじめ備えておく方法として、予備的遺言をしておくことが挙げられます。 

 

予備的遺言とは、遺言で財産を相続させると指定した方が先に死亡した場合に備えて、あらかじめ次の相続人等を指定しておく内容の遺言のことです。
具体例で見てみることにしましょう。

 

第1条 遺言者●●●●は、遺言者の所有する一切の財産を妻である●●▲▲(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条 遺言者●●●●の死亡以前に妻●●▲▲が死亡していた場合には、遺言者の所有する一切の財産を遺言者の所有する一切の財産を、妹○○△△(昭和△年△月△日生)に相続させる。

 

この、第2条のような遺言を、予備的遺言といいます。予備的遺言で指定した方がご健在であれば、せっかくの遺言が無効になってしまうことを回避でき、遺産分割をめぐって骨肉の争いになることも回避されることになります。

 

遺言をされる方の事情にもよりますが、予備的遺言にて財産を受け取ると指定される方は、一般的にはご自身よりも若い世代の方にされた方がよろしいかと思います。

 

 

【予備的遺言を活用した方が良いケースの例】

◎いざとなったら遺言を書き直しても良いだろうが、その頃には認知症になっているおそれがあるなど、将来の判断能力が不安な場合
◎仮に遺産分割協議になった場合に、相続人の間でもめ事になるだろうと予想される場合。
◎推定相続人(遺言者が亡くなられた際に相続人となるべき者)の中に、相続させたくない者がいる場合。

 

このように、遺言書の作成にはさまざまな要素を考慮する必要があります。
詳しくはご相談ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。