44.相続における土地の価格とは?

Q.先日父が亡くなり、近々相続人(私と兄弟)がみんなで集まって遺産分割協議をすることになりました。

父は土地を結構所有していたので、その評価額を調べる必要があるのですが、土地の価格っていろいろ種類があるみたいですね。一体どれを見れば良いのでしょうか?


A.一般に、土地の価格には「一物四価」といって、1.実勢価格(時価)、2.公示価格、3.相続税評価額、4.固定資産評価額、の4つの価格が存在します。
これらの価格を用いる際には、その用途に応じてしっかりと使い分ける必要があります。


世の中のあらゆる物には、「お金で買えない価値」を除けば(どこかのクレジットカード会社のCMみたいですが…)、たいていの場合、価格が付けられていますよね。


土地についても同様に価格が付けられており、それは相続という局面でもさまざまな場面で問題になってきます。
一般に土地の価格は非常に大きいことから、問題の程度も大きくなってきます。


例えば、
『あの土地を売ったら幾らくらいになるのかな?』
『あの土地の価格と同じくらいの現金が欲しい』
『実家の土地って幾らくらいの価格になるの?』などでしょうか?.


ズバリ申し上げますと、土地の価格には以下の4つの価格があり、一般に「一物四価」などと呼ばれています。


【1.実勢価格(時価)】


実際に土地が売買される価格です。不動産屋さんの店頭に掲示されている価格と言っても良いでしょう。


一般的にはその土地の相場価格ということになりますが、土地の個別の要因(道路向き・日当り・形状など)や景気の影響を受けて、価格が上下したりします。


また、とにかく売りたいとなれば値引きされたり、とにかく買いたいとなれば値上がりしたりもします。


下記の2.~4.と比較するならば、公的ルールのない価格とも言えます。


【2.公示価格】


国や都道府県が毎年公表している土地の価格になります。


・地価公示価格…国土交通省が毎年1月1日時点の地価を3月下旬に発表しています。
・基準地価格…都道府県が毎年7月1日時点の地価を9月頃に発表しています。


いずれも、不動産鑑定士が鑑定評価した価格をベースに決定されます。
下記でご説明する相続税評価額と固定資産評価額の算出の基礎ともなっていますので、とても重要な価格です。


【3.相続税評価額(路線価)】


土地の相続税や贈与税の計算の基礎となる価格です。
国税庁が毎年1月1日現在の価格を7月1日に発表します。

土地の所在地により、路線価方式と倍率方式という2種類の評価方法があります。


主に都市部で採用されている路線価というのは、土地全体の価格ではなく、道路(主に公道)の価格です。所有地に接している道路の価格に土地の面積を掛けて、相続税評価額を算出します。これが路線価方式です。


主に地方で採用されている倍率方式とは、下記4.の固定資産評価額に一定倍率(例えば1.1倍など)を掛けて相続税評価額を算出する方式です。


路線価方式、倍率方式のそれぞれに計算方法や解釈が複雑で、算定する税理士によって算定額が異なってしまうのですが、納税者が不利益にならないよう、上記2.の公示価格のおおむね80%程度の価格が目安とされています。


※ちなみに、建物の相続税評価額は、下記4.の固定資産評価額と同額になります。


【4.固定資産評価額】


市町村(東京23区は都)が、固定資産税・不動産取得税・登録免許税などの徴税額を算出するときに用いる価格です。


私ども司法書士が不動産の相続登記において登録免許税の額を算出する際には、この固定資産評価額を用いることになります。


3年に1度、1月1日現在で評価額を見直し(奈良県内では平成27年1月1日に見直されました)、公表されます。


価格決定が3年に1度と頻度が低いため、実際の土地の価格と誤差がある場合もあります。そのため納税者の不利益にならないよう、上記2.の公示価格のおおむね70%程度の価格が目安とされています。


このように、土地の価格が何種類もあるのは、国や地方自治体、売主や買主などが、それぞれの目的に応じて、異なる視点や基準によって土地を評価しているためです。


従いまして、これらの価格を用いる際には、その用途によってしっかりと価格を使い分ける必要があります。


「ややこしい…」とお嘆きの声もあろうかと思います。詳しくはお気軽にご相談ください。


はしもと司法書士事務所でも、相続において詳細な土地の評価額を算出する必要があると認められる場合には、税理士などの専門家をご紹介することも可能ですので、お気軽にお申し付けください。