32.相続関係説明図とは…ただの家系図ではありません

私たち司法書士が、お客様からご依頼をいただいて相続の登記を法務局に申請する際には、相続関係説明図という書面を提出します。


相続関係説明図とは、被相続人(亡くなられた方)と相続人の方とのご家族関係を図式化して表した書面です。簡単に言ってしまえば家系図のようなものですが、相続の登記申請の添付書面として法務局に提出するのには、れっきとした理由があるのです。


【理由その1…相続関係を一覧形式にして分かりやすく説明するため。】


法務局の職員(登記官)の方は、相続の登記ももちろんですが、それだけでなく、毎日のように数多くの登記申請の案件の書面の審査をしています。当然のことながら、そこにはおびただしい量の書面が添付されています。それらの書面の内容に不備などの問題がないか、全部チェックしなければならないわけですから、大変な激務です。


特に戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本などの書面は内容の読み取り方が複雑で、その解説だけで1冊の本が書けるぐらいですから、登記官の方にとっても手間がかかります。そこで、一目見ただけで相続関係が分かるように図式化してくれた相続関係説明図があれば、それを手がかりにしてチェックをしやすくなります。


そのようにして、少しでも登記官の負担を軽減できるように、相続関係説明図を添付することとされているのです。


【理由その2…提出した戸籍謄本などの原本を還付してもらうため。】


相続関係説明図の機能は、相続関係を分かりやすく図式化する機能だけではありません。実はもう1つ重要な機能があります。そして、皆様にとりましては、こちらの方が重要な機能だと思います。

それは、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の原本を還付してもらうための機能です。


登記の申請におきましては、申請に必要な書面のうち、原本を法務局が徴収しなければならない旨定められた書面以外の書面は、その旨希望して所定の準備をすれば、原本を還付してくれます。


例えば、相続の登記申請におきましては、次の書面は原本還付できます。


戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
住民票(・除票)・戸籍の付票
遺言書
遺産分割協議書
◎遺産分割協議書に捺印した実印の印鑑証明書
固定資産評価証明書


原本還付の方法は、通常、上記の書面のコピーをとり、そのコピーに「原本に相違ない」旨の記載と署名・捺印をして、原本と一緒に提出します。法務局はチェックの後、コピーの方を保管し、原本を申請人に還付することになります。


ところが、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本の場合には、特に相続の登記申請の場合には何通も必要になるケースが多いため、全部のページをコピーするとなると膨大な量になってしまいます。


そこで、相続関係説明図を1枚提出すれば、それらの戸籍謄本などを全部コピーしたものとみなして原本還付できるようにしたのです。


このように、相続関係説明図には、単なる家系図としてだけではない、重要な機能があります。詳しくはご相談ください。