31.生まれる前の胎児がいる場合

Q.夫が交通事故で亡くなりました。私は現在、妊娠6ヶ月です。夫には自宅である土地と建物、その他に預貯金がいくらかあります。夫の両親は既に他界していますが、姉がいます。生まれてくる子供は、夫の遺産を相続することができるのでしょうか。また、できるとして、手続きはどのようにしたら良いのでしょうか。


A.亡くなられたご主人様の相続の権利を有するのは、奥様と、現在奥様のお腹の中におられるお子様になります。
手続きとしましては、お子様が生まれてくるのを待って、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て奥様と、選任された特別代理人との間で遺産分割協議を行うことになります。



奥様は突然にご主人様を亡くされ、さぞお辛かったであろうと思います。またお子様が生まれるのを楽しみにされておられたであろうご主人様はさぞ無念であったろうと思います。その心情をお察し申し上げます。


ご質問の件ですが、まず、民法の規定では、生まれる前の胎児にも相続権があります
但し、その胎児が残念ながら死産となった場合には、相続権はなかったものとなります。


(参考)民法第886条
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。


したがいまして、ご質問のケースでは、奥様と、現在奥様のお腹の中におられるお子様に相続権があります。
もし万が一、お子様が死産となった場合には、お子様の相続権はなかったものとなりますので、奥様と、ご主人様のお姉様に相続権があることになります。


ただ、具体的な手続きは、奥様の妊娠中に行うことはできません。上記のとおり、お子様が無事に生まれてくるまで相続人が誰であるのかを確定できないからです。
(上記のように死産のケースも稀ながらありますし、逆に生まれてくるお子様がお2人以上の可能性もあるからです。)

そこで、お子様の出生を待って手続きを行うことになります。


またお子様は当然未成年者であり、法定代理人である奥様が…、と言いたいところですが、奥様ご自身の相続権と利益が相反しますので、お子様には特別代理人を選任することになります。 特別代理人には、親族の方がなられるケースが多いです。


家庭裁判所にお子様の特別代理人の選任審判を申し立てます。選任の審判がなされれば、奥様と、選任された特別代理人とで遺産分割協議を行います。
(実務上は、選任審判の申し立て時点で遺産分割協議書の案を提出することになります。)


特別代理人選任を伴う手続きなど、詳しくはお気軽にご相談ください。