22.相続にまつわる国家資格者(士業者)について

相続に関する手続きには、不動産の名義変更の登記はもちろんですが、その他にも様々な手続きがあります。
それらの手続きには様々な国家資格者(士業者)が関与しています。誰でも手続きを代行できるわけではありません。


そこで、今回はそれらの手続きの代行が認められる国家資格者(士業者)などの概要を見ていくことにしましょう。

 

相続人の調査(戸籍類の収集)

 

相続人の方から戸籍謄本などを取得するための委任状をもらえれば、特に国家資格がなくても誰でも代行できます。


一方、委任状なしで職権で取得するために、私ども司法書士には職務上請求書という書類を用いて戸籍謄本などを取得する方法も認められています。


もっとも、この職務上請求書の使用は、登記申請に必要な場合に限られていて、不正使用に対しては法務局からの懲戒処分という厳しい制約が付されています。


この職権で取得する方法は、司法書士以外には弁護士や行政書士などにも認められています。

 

財産の調査(固定資産評価証明書の取得)

 

これも相続人の方から委任状をもらえれば、特に国家資格がなくても誰でも代行できます。
一方、委任状なしで職権で取得するために、市町村にもよりますが、法務局で依頼書と呼ばれる書類に登記官の印をもらい、その依頼書を市区町村の役所へ持参して評価証明(実務上は価格通知書といいます)をもらう、という方法もあります。


※奈良市や大阪市など、この方法が使えない市町村もあります。詳しくはお問い合わせください。


※なお、登記申請におきましては、皆様のお宅に届けられる固定資産税の納税通知書のコピーを添付することで対応可能な市町村もございます。詳しくはお問い合わせください。

 

遺産分割協議書の作成

 

相続人の方がご自身で(つまり、業務としてではなく)作成されることは、もとより可能です。国家資格のない方が業務として作成することは違法です。
では、国家資格者が業務として作成することはどうなのでしょうか。

 

まず、弁護士は一般の法律事務全般を業務として行うことができますので、問題なく可能です。

行政書士も、官公署に提出する書類を作成することを業務とすることができますので、問題なく可能です。
司法書士の場合は、法務局に提出する書類を作成することを業務として行うことができますので、司法書士も登記申請のためなら遺産分割協議書を作成することができます
ただ、登記申請と無関係に遺産分割協議書だけを作成することはできないという制約があります。

 

では、税理士はどうでしょうか。
税理士の場合は、税理士法により、税理士業務に付随した財務書類の作成は認められています。ただ、他の法律でその事務を業務として行うことが制限されている事項については除外されています。
つまり、遺産分割協議書の作成は、弁護士法・司法書士法・行政書士法で、その作成を業務として行うことが制限されているため、税理士にはできない、という結論になります。

 

相続登記の申請

 

不動産(土地・建物)の相続による名義変更の登記の申請は、司法書士の業務範囲です。なお、弁護士は登記申請の代理人になれる場合がありますが、それ以外の方が代理人になることは違法です。

 

相続税の申告

 

こちらは税理士の業務範囲となります。
ただ、税理士の先生方の中でも、相続税に精通された方は実は少数派で、一説には税理士全体の1割程度とも言われています。


相続税に関するご要望がございましたら、当事務所にて相続税関係業務に精通した税理士の先生をご紹介することも可能ですので、詳しくはご相談ください。

 

相続(遺産分割)に関するトラブル

 

相続(遺産分割)に関してトラブルが発生しているケースについては、弁護士のみが代理人となって対応することができます。


司法書士も一部裁判業務ができるようになっていますが、このような相続(遺産分割)のトラブルについては代理権がなく、訴状・審判等の申立書の作成にとどまります。


もっとも、遺産分割の協議がうまくまとまらないのだが、裁判所に持ち込むことまでは考えていない、という場合もあろうかと思いますので、お気軽にご相談ください。


※紛争に達していると思われるレベルのケースにつきましては、相続トラブルに精通した弁護士の先生をご紹介することも可能ですので、詳しくはご相談ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。