14.相続放棄について

6.相続による財産の受け継ぎ方…単純承認・相続放棄・限定承認」のページで、被相続人(亡くなられた方)の財産の受け継ぎ方には3つのパターンがあるというお話をしました。
ここでは、その中の「相続放棄」について見ていきたいと思います。

 

相続放棄とは、相続があったことを知って3ヶ月以内家庭裁判所にその旨を申し出る(これを「申述」といいます。)ことによって、初めから相続人でなかったことにする手続きのことをいいます。相続放棄を申述することによって、被相続人の財産は一切受け継ぎません。


注.遺産分割協議を行った結果、ある相続人の方の取り分をゼロとすることを一般に「相続放棄」と言うことがよくありますが、ここでの相続放棄は、それとは全く異なりますのでご注意ください。

 

相続放棄は、以下に当てはまる事情のある方にはメリットが大きいです。

 

マイナスの財産(借金など)の方が明らかに多い場合
 遺産分割協議による場合、マイナス財産をどのように引き継ぐ(引き継がない)かを相続人同士で決めても、債権者の同意がなければできません。しかし、家庭裁判所に相続放棄を申述すれば、債権者の意向と関係なくマイナス財産は引き継ぎません。


相続の争いに巻き込まれたくない場合
 相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったことになりますので、相続争いからも解放されることになります。

 

一方、デメリットとしては、

 

◎後からプラス財産(不動産、預貯金など)が発見されても、残念ながら受け継ぐことができません。


◎初めから相続人でなかったことになるため、仮に相続放棄された方にお子様などがおられる場合でも、相続人としての地位がそのお子様などに引き継がれません。

 

なお、相続財産を勝手に処分したりすると、相続を単純承認したものとみなされますので、ご注意ください。(つまり、マイナス財産も受け継ぐことになってしまいます。)

 

【相続放棄の申述の手続き】

 

申立ては、亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。


民法の規定により、自己に相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に申述を行わないと効力を生じません。逆に相続が開始する前に(つまり、ご健在のうちに)相続放棄を行うこともできません。

 

必要な書類は、申述書の他に、
◎亡くなられた方の除籍・改正原戸籍謄本類
◎亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の付票
◎相続放棄される方の戸籍謄本
◎収入印紙800円分
◎郵送用の切手(額は、家庭裁判所によります。)
※場合により、追加の資料提出を家庭裁判所から要請されることがあります。

 

相続人の中に相続放棄をされた方がいる場合で、他の方が不動産を相続された場合には、その相続による名義変更(所有権移転)の登記の申請に際し、「相続放棄申述受理証明書」という書類が必要になります。


これは相続放棄の申述を受理した家庭裁判所に申請すれば、1通150円(収入印紙)で発行してくれます。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。