13.相続人が誰もいない場合の手続き

前項までは、相続人に何らかの事情があって、そのままでは手続きを進めることができないケースを順に見てきました。

 

では、被相続人(亡くなられた方)に身寄りがなく、その財産を受け継ぐ方が誰もいない場合には、その財産は一体どうなるのでしょうか。

(※注.ここでの「誰もいない場合」とは、相続人が誰もいない場合のほか、法定相続人全員が相続放棄を家庭裁判所に申し出た結果、財産を受け継ぐべき人が誰もいなくなった場合をも含みます。)

 

結論から言いますと、そのような場合の財産は、最終的には国庫に帰属します。
ただ、被相続人がお亡くなりになられてすぐに国庫に帰属するわけではありません。

 

民法の規定によりますと、このような場合、まずは相続財産自体が「相続財産法人」という法人として扱われます。

 

そして、被相続人の債権者などの利害関係人が家庭裁判所に相続財産の管理人選任の申立てをします。


審判によって家庭裁判所から選任された相続財産管理人が、被相続人(亡くなられた方)の債権者などに対して被相続人が残した債務を支払うなどして清算を行います。

 

土地や建物の場合には、相続財産管理人が、登記簿上の名義人を、亡くなられた方の個人名義から、「亡○○○○相続財産」という法人名義に変更する、所有権登記名義人氏名変更登記を行います。

 

また、特別縁故者とよばれる、被相続人(亡くなられた方)と一緒に暮らしていたり、療養看護をしていた人などの、特別の縁故があった人に、相続財産の全部または一部を与えることができます

 

このようにして清算を行った後に残った財産を、国庫に帰属させることになります。


【相続財産管理人選任申立ての手続き】

 

 申立ては、亡くなられた方の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。相続財産管理人には、特に資格制限などはなく、亡くなられた方と利害関係のある方が選任されるケースが一般的ですが、司法書士などの専門家が選任されるケースもあります。

 

相続財産管理人選任の審判から相続財産の整理手続きが完全に終了するまでは、公告期間だけでも最低13ヶ月必要なため、全体としては1年半~2年はかかります。

 

必要な書類は、申立書の他に、
◎亡くなられた方の除籍・改正原戸籍謄本類
◎亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の附票
◎(生きていれば)相続人となるべき方が全員死亡していることが分かる戸籍謄本類
◎相続財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票
◎申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書の写しなど)
◎相続財産に関する資料(不動産の登記簿、預貯金や有価証券の残高が分かる書類)
◎収入印紙800円分
◎郵送用の切手(額は、家庭裁判所によります。)
◎官報公告料3,775円
※場合により、追加の資料提出を家庭裁判所から要請されることがあります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。