7.相続人の中に未成年者がいる場合の手続き

相続が開始した場合、法定相続人(相続の権利を有する方)は、その年齢に関係なく、相続の権利を取得することになります。遺産分割協議は法定相続人全員が参加しなければならず、未成年者だからといって除外して行えば、その協議は無効となります。

 

一方、未成年者は単独で法律行為を行うことができず、法律行為を行うには親権者の同意を要します。遺産分割協議を行うことも「法律行為」に他なりません。
とすれば、未成年者の遺産分割協議については、親権者が同意すればOK、となるのでしょうか?

 

例.夫A(50歳)が死亡して相続開始。法定相続人は妻B(48歳)、長男C(17歳)、長女D(15歳)の3人で遺産分割協議、という事例。

 

上記の例で考えますと、長男Cと長女Dは未成年者なので、単独で有効に遺産分割協議を行うことはできません。かといって、妻(2人の母=親権者)Bが同意してもOK、とはなりません。なぜなら、B自身も法定相続人であり、CやDと遺産に関しては利害が対立しうる関係になるからです。もしこれを認めると、事実上B一人で好きなように決められてしまうので、CやDの利益を害するおそれがあるからです。
※たとえ、Bが自分の取り分を無しとして、遺産を全部CやDに与えようと思っても同じです。「利害が対立しうる関係」かどうかはあくまで形式的に判断するからです。

 

そこでこのような場合、親権者の代わりに子の代理人となる「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、その選任された特別代理人が子に代わって他の相続人と遺産分割協議を行うことになります。

 

上記の例では、長男Cの特別代理人E、長女Dの特別代理人Fの選任を家庭裁判所に申し立て、B、Cの特別代理人E、Dの特別代理人Fの3人で遺産分割協議を行うことになります。(特別代理人は、未成年者1人につき1人必要です。)

 

特別代理人の選任は、親権者などが家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行い、選任の審判を受ける必要があります。

 

【特別代理人選任申立ての手続きについて】

申立て先は、未成年者の方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 

必要書類は、申立書のほか、
◎申立人(親権者)の戸籍謄本
◎未成年者の戸籍謄本

※同じ戸籍謄本が両者を兼ねている場合は、1通で大丈夫です。

◎特別代理人の候補者の住民票
◎資料となる遺産分割協議書の案など
◎未成年者1人につき、収入印紙800円分
◎郵送用の切手(額は家庭裁判所によります。)
※標準的なケースでの書類です。場合により他の書類の提出を要請される場合があります。

 

特別代理人の候補者の資格には特に制限はなく、相続の権利を有しない親族の方(祖父母やおじ、おばなど)がなられるケースが多いですが、司法書士や弁護士など専門家がなるケースもあります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。