7.(新着情報)会社の登記の申請に「株主リスト」の添付が必要になりました

このほど、平成28年4月20日付で、商業登記規則等の一部を改正する省令(平成28年法務省令第32号)が公布されました。

 

そして、この省令改正は、平成28年10月1日から施行されました。厳密には、10月1日は土曜日ですので、平成28年10月3日(月)以降の登記申請から適用されています。

 

と堅苦しい言い方をしてしまいますと、一体何のことやら、という感じですが、実はこの省令、株式会社の経営者の皆様はもちろんのこと、私たち司法書士にとりましても商業登記に関する実務に大きな影響がありそうな内容ですので、ここでお知らせさせていただきます。

 

大まかに申し上げますと、商業登記規則が改正され、株式会社の登記すべき事項について株主総会の決議が必要になる場合や株主全員の同意が必要な場合には、株主総会議事録に加え、さらに下記のとおりの株式会社の株主の氏名、住所、保有株式数、議決権数とその割合を記載し、その内容に相違ない旨の文言を記載して代表者が証明した「株主リスト」の提出も必要になる、という内容になっています。

 

(種類株式を発行している株式会社で、種類株主総会の決議が必要となる場合や、種類株主全員の同意が必要な場合も同様です。)

 

【株主総会決議が必要になる場合】

 

保有する議決権の割合の上位3分の2に達するまでの人数の株主(最大で10人まで)の、氏名、住所、保有株式数、議決権数を記載した「株主リスト」

 

注.その達する人数のところで同順位の者が複数いる場合には、その同順位者は全員について記載が必要となるようです。

 

 【株主全員の同意を要する場合】

 

株主全員の、氏名、住所、保有株式数、議決権数を記載した「株主リスト」

 

※旧・商業登記規則第61条に第2項と第3項を新設し、新しい第2項は株主全員の同意を要する場合の規定を、新しい第3項は株主総会決議が必要になる場合等の規定を設けました。

そして旧・第2項以下(主に、申請書に印鑑証明書や本人確認証明書を添付すべき場合についての規定)は、項を繰り下げて第4項以下になりました。

 

では、なぜこのような改正が行われることになったのでしょう。

法務省が発表した今回の省令改正の理由は、要約すると次のようなものです。

 

1.株主総会議事録等を偽造して役員になりすまして役員の変更登記または本人の承諾のない取締役の就任の登記申請を行った上で会社の財産を処分するなど、商業・法人登記を悪用した犯罪や違法行為が後を絶たないので、消費者保護又は犯罪抑止の観点からさらなる商業登記の真実性の担保を強化する措置をとるべき、という要請がある。

 

2.国際的にも、登記所において法人の所有者情報を把握して法人の透明性を確保することにより、法人格の悪用を防止すべきであるとの要請がされている。

 

3.そこで、株式会社の主要株主等の情報を商業登記所に提出することで、不実の株主総会議事録が作成されるなどして真実でない登記がされることを防止することができ、また法人の透明性も確保される。

 

4.関係者が事後に株主総会決議の効力を訴訟などで争う場合などにも有益となる。

 

つまり、今回の改正も商業登記の真実性の担保の強化の一環である、ということが言えそうです。

 

株式会社の登記すべき事項について「株主総会決議が必要になる場合」というのは非常に多岐にわたりますので、実務上もこの「株主リスト」を提出すべきケースは、非常に多くなるように思います。

 

「株主リスト」をスムーズに提出するためには、その前提として、「株主名簿」が整備されていなければなりません。

 

株式会社は本来、株主名簿を整備しておかなければならないと会社法で定められております。

 

(参考)会社法 第121条
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
1 株主の氏名又は名称及び住所
2 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
3 第1号の株主が株式を取得した日
4 株式会社が株券発行会社である場合には、第2号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

 

もっとも、例えばご家族だけで全ての株式を保有しておられるような、株主の数が少ない株式会社の場合などでは、株主名簿を整備されていないケースも多くあるようです。

 

株主名簿の作成自体は必要事項を一覧表にまとめておけば良く、それほど難しいものではありませんので、ぜひ、この機会に株主名簿を作成しておかれることをおすすめします

 

詳しくは、お気軽にご相談ください。

 

(参考)法務省ホームページ『「株主リスト」が登記の添付書面となります』

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。