6.有限会社のいま

会社と言えば、皆様はどんな会社を連想されるでしょうか?
一番ポピュラーなのが、やっぱり株式会社ですよね。

そして、その次にポピュラーだったのが、今回のテーマである有限会社です。


今、「ポピュラーだった」と書きましたが、実は現在の日本の法律上、有限会社を新たに設立することはできません。
平成18年(2006年)5月1日に新しい会社法が施行されたことに伴い、それまであった有限会社法という法律が廃止されたからです。


ただ、法律が変わったからといって会社を解散させられたり、無理やり株式会社などに変更しろ、と言われても困ってしまいます。


そこで、それまでにあった有限会社は、新しい会社法の下においては株式会社とみなされることとする一方で、旧有限会社法の下で特徴的だった部分はそのまま生かした会社として存続させることとなりました。

言うならば、“「有限会社」という名の株式会社”という感じです。


このため、現在では有限会社のことを法律上、特例有限会社(とくれいゆうげんがいしゃ)と呼んでいます。


というわけで、世の中には今も数多くの有限会社が存在しています。
基本的には何らの手続きを要することなく、そのまま存続しているということです。
(実は登記簿の記載内容は、一部分で株式会社にふさわしい内容の記載に変えられていますが、職権で行われたため、特に意識されていない方が多いかと思います。)


【(通常の)株式会社と異なる点】


◎設置できる会社の機関は、株主総会の他には取締役と監査役(会計監査のみに権限が限定されます)だけです。取締役会などは設置できません。
◎株式を他人に譲渡するには会社の承認が必要となる一方で、株主間の譲渡は自由です。
決算公告が不要です。
◎たとえ大規模な会社であっても会計監査の義務がありません。
役員(取締役、監査役)には任期がありません。(改選の必要がない)
◎特別決議の要件が、株式会社よりも厳しめになっています。


【通常の株式会社へ移行することもできます。】


特例有限会社は、上でも申し上げましたとおり、通常の株式会社とは異なる特色があります。一方で、通常の株式会社と比較して窮屈に感じる場面もあるかも知れません。


そこで、一定の手続きを経て、特例の適用を受けない通常の(つまり、名称も株式会社になります)株式会社へ移行することも可能となっています。


具体的には、「株式会社」という文字を含む商号に変更する旨の定款を変更する株主総会決議を行い、(商号変更後の)株式会社の設立の登記と特例有限会社の解散登記を同時に申請する、ということになります。


このような(通常の)株式会社への移行には、メリット・デメリットがそれぞれありますので、個々の会社様の事情を踏まえて考える必要があります。


【有限会社みたいな会社は新たに作れないの?】


上でも申し上げましたとおり、現在、有限会社を新たに設立することはできません。


しかし、株式会社よりも比較的手軽に設立することができて、出資者が有限責任のみを負う(=出資した分以上の責任を負わない)という形態の会社として、新しい会社法の下では、合同会社(ごうどうがいしゃ)というものが新たにできました。


アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとしているので、「日本版LLC」とも言われています。


合同会社というと小さな会社というイメージを持たれるかもしれませんが、実はスーパー大手の西友や、iPhoneなどでおなじみのアップルの日本法人も合同会社ですので、必ずしも規模は関係ありません。


会社設立の費用や手間を抑えるために合同会社として設立して、会社が成長してから株式会社に変更する、といったことも可能ですので、合同会社を設立する、というのも選択肢の一つとしてご検討されてはいかがでしょうか。


詳しくは、お気軽にご相談ください。