4.監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記について

平成27年(2015年)5月1日、改正会社法が施行されました。

 

今回の改正会社法の内容は、社外取締役の拡充など、主として大企業にとって重要な意味のあるものが多いのですが、日本の会社の大多数を占める中小企業の経営者の皆様にとっても重要な変更があります。

 

それが、表題にもありますとおり、株式会社の監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めが、定款に記載するだけでなく、登記すべき事項とされたことです。

 

これは、従来、株式会社の登記簿(登記事項証明書)に「監査役設置会社」である旨の記載がされている場合であっても、その監査役の実際の業務の権限の範囲が、会計に関するものに限定されているのか、株式会社の業務執行に関するものをも含むのかが分からなかったため、それを登記簿を見れば分かるようにしたものです。

 

【監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記を申請する必要がある株式会社とは?】

 

監査役がおられる株式会社のうち、以下の1.~3.に当てはまる株式会社です。
1.平成18年5月1日より前からある株式会社で、資本金が1億円以下、かつ株式の全部につき譲渡制限がある株式会社
2.平成18年5月1日以後に設立された株式会社で、設立時から監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めを定款に設けていた株式会社
3.その他、平成18年5月1日以後に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めを定款に設けた株式会社

 

【いつまでに登記を申請しなければならないか?】

 

平成27年(2015年)5月1日以降、直ちに登記しなければならないとすると、株式会社の皆様のご負担が大きいとの配慮から、経過措置が講じられており、次回の監査役の就任または退任の登記の際に同時に申請すれば良いとされています。

 

【費用の負担はどうなるのか?】

 

監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記の申請には所定の登録免許税がかかります。申請1件につき金10,000円(資本金の額が1億円を超える株式会社の場合には金30,000円)ですが、役員変更登記と同じ税区分とされているため、役員変更の登記と同時に申請すれば、別途追加して支払う必要はありません

 

【必要な書類は?】

 

いずれの場合にも、登記申請には原則として株式会社の定款の写しが必要になります。
(※定款の写しには原本に相違ない旨の文言と商号・代表者資格・氏名を記載の上、会社実印を押印する必要があります。)

 

その他、場合により次の書類が必要となります。

◎上記1.の会社の場合には、(定款の写しの添付に代わり、)監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるものと法律の規定でみなされた会社である旨を宣言した、代表者の作成による証明書

◎上記3.の会社の場合には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めを定款に設ける決議をした際の株主総会議事録

 

※なお、監査役がおられる会社であっても、有限会社の場合には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記を申請する必要はありません。有限会社の監査役はすべて監査の範囲を会計に関するものに限定されているため、登記しなくても明らかだからです。

 

今回の改正により、株式会社の監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記が必要となる株式会社は多数にのぼることが予想されます。

 

現在、この監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めの登記申請を失念している、あるいは申請内容に不備があることから、登記申請書の補正を求める事例が多発し、法務局が非常に苦慮している、とのお話も聞こえてきています。

 

詳しくは、お気軽にご相談ください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。