6.成年後見人・保佐人・補助人になることができる人とは

Q.私は、いとこ(一人暮らし)が介護サービスを利用している事業所の所長さんから、いとこの認知症が進み、サービスの提供に支障があるので、私が成年後見人候補者となっていとこの後見開始審判の申立てをして欲しい、と頼まれました。
成年後見人とはどのような人がなることができるのでしょうか。また、逆に後見人になれない人はいますか?。

 

A.成年後見人になるためには、法律が定める欠格事由に該当しない限りは、特別な資格などは不要です。家庭裁判所が、さまざまな事情を考慮して、成年後見人にふさわしいと判断した方を成年後見人に選任します。

 

後見、保佐、補助(これらを合わせて法定後見といいます)の開始の審判の申立てがなされると、家庭裁判所は職権で、成年後見人・保佐人・補助人を選任します。家庭裁判所が職権で選任するため、申立書に記載された成年後見人などの候補者の方が必ずしも選任されるとは限りません

 

そして、後見などの開始の審判に対しては不服を申し立てることはできますが、成年後見人などが誰であるかに対しては不服を申し立てることはできないとされています。
つまり、単に「希望した人と違う人が成年後見人に選任された」というだけでは不服を申し立てることができないのです。

 

成年後見人・保佐人・補助人に選任されるには特別な資格は不要です。

法が定める一定の事由(これを欠格事由といいます)に該当しない限り、個人・法人を問わず、成年後見人などになるのがふさわしい、と家庭裁判所が判断した方が選任されます。

 

※なお、私ども司法書士が成年後見人などに選任される場合には、家庭裁判所は、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの会員であり、かつ所定の研修を受講した司法書士を選任するようになっております。

 

【成年後見人などになれない事由(欠格事由)とは】

 

以下の方は、成年後見人・保佐人・補助人にはなれません。

 

1.未成年者
未成年者は判断能力が未成熟なため、後見人などとして適切な職務の遂行を期待できないからです。

 

2.家庭裁判所から解任された法定代理人・保佐人・補助人
「解任された」のは、過去に不正行為や著しい不行跡があったからであり、適切な職務の遂行を期待できないからです。

 

3.破産者
破産者は自己の財産管理権を喪失しているため、他人の財産管理などを職務とする成年後見人などの職務の適切な遂行を期待できないからです。

 

4.被後見人に対して訴訟をした者並びにその配偶者・直系血族
被後見人と利害の対立する関係にある者とその近親者には、本人の利益の保護を旨とする成年後見人などとしての職務の適切な遂行を期待できないからです。

 

5.行方の知れない者
行方不明の方が後見人などの職務を果たすことは不可能だからです。

 

【成年後見人などになるのにふさわしいと判断される事情(適格性)とは】

 

家庭裁判所は、①成年被後見人などの心身の状態・生活や財産の状況、②成年後見人などとなる者の職業・経歴など、③成年被後見人などとの利害関係の有無、④本人の意見、⑤その他一切の事情、を考慮して、職権で成年後見人を選任します。

 

ですから、申立書に記載された成年後見人などの候補者の方が選任されなかった場合であっても、必ずしもその方が不適格であると判断したわけではなく、選任された方の方がより適任であった、ということを意味しています。

 

以下、もう少し具体的に見てみましょう。

 

◎成年後見人などとなる者の職業・経歴など

 

家庭裁判所は、後見等の開始審判の申立書とともに提出された候補者事情説明書や申立ての際の事情聴取において、候補者の方に関する情報を収集します。
・財産管理の事務もありますので、収入や負債についての説明も求められるようです。
・年齢についても、高齢(おおむね70歳以上)の場合には、後見人に選任されるのは難しいこともあるようです。
・被後見人が在宅で生活している場合には、住所地や、緊急の場合に対処可能かなども考慮されます。

 

◎成年被後見人などとの利害関係の有無

 

・例えば遺産分割協議のために後見等の開始の審判を申し立てるような場合には、候補者の方と成年被後見人などの方がともに相続人であることが多く、互いに利益が相反しますので、そのままでは成年後見人などには選任されません。
・例えば成年後見人の候補者が、被後見人の方が入所している施設を経営する法人である場合には、施設利用料の支払いに関して利益が相反する可能性がありますので、家庭裁判所はその法人を成年後見人に選任することは適当でないと判断する可能性があります。