5.成年後見制度の利用の可否 その2 身体に障がいがある方の場合

Q.相談者のKさんは、身体に障がいがあり日常生活を自力で送るのが困難なため、身体障がい者施設に入所しています。Kさん自身の判断能力は正常ですが、母親に預貯金を預け、施設費などの支払をしてもらっていました。

 

ところが、先日Kさんの母親が亡くなられました。そこでKさんは、金融機関に出向いて施設費などの振込みをしてくれる人がいなくなってしまったため、成年後見制度を利用できるのであれば利用したいと考えているようです。

 

Kさんのように判断能力は正常で、ただ身体に障がいがあるのみの人が成年後見を申し立てできるのでしょうか?。

 

A.Kさんのように判断能力には不十分な点がなく、ただ身体の不自由さを伴う身体の障がいがあるのみの方は、成年後見制度の対象にはなりません

 

もっとも、判断能力のあるKさんの場合には、信頼できる第三者と財産管理契約を締結して、その第三者に施設費などの支払を任せるなどの方法が考えられます。

 

かつての禁治産・準禁治産制度の時代には、「準禁治産者」の中に聴覚に障がいのある方、発話(しゃべること)に障がいのある方、視覚に障がいのある方が含まれていた時代がありました。

これは不当に差別的な扱いだということで昭和54年(1979年)にこれらの方は準禁治産者の対象から除外されました。

 

現在の成年後見制度でも、身体に障がいがあるのみで判断能力が十分にある方は、制度の対象とはされていません。
なぜなら、判断能力が十分にある方は、たとえ身体の一部に障がいがあったとしても、自ら様々な方法を利用して信頼できる他人を選択し、その他人に財産管理などの事務を依頼することができるので、成年後見制度によって判断能力を補完する必要性はないものと考えられたからです。

 

ご質問のKさんの場合も、信頼できる第三者と財産管理契約を締結するなどして、その第三者に施設費などの支払を委任するという方法が現実的だと思われます。

 

ただ、現実問題として、Kさんがそのような信頼できる第三者を探すことには困難が予想されます。本当はKさんのお母様がご存命中に、お母様亡き後に施設費などの支払などの財産管理を誰に任せるのか、Kさんの介護を誰にどのような形で依頼するのかを、お母様や施設側と話し合って決めておくのが理想的だったように思われます。

 

信頼できる第三者がいないような場合には、司法書士などの専門家に財産管理を依頼し、施設に依頼した介護についての監視・監督をも依頼する、というようなことも考えられます。

 

このような財産管理契約の締結は任意の契約であるため、成年後見制度の場合のように、裁判所の監督というような歯止めがないため、契約内容は慎重に検討する必要があります。

詳しくはご相談ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。