19.不動産の登記簿について その1 登記簿の種類

不動産の登記制度は、民法や不動産登記法などの規定により、不動産に関する取引上重要な一定の事項(所有者の住所氏名、担保権などの権利の権利者と権利の内容など)を、不動産登記簿に記録して法務局に備えておくことにより、広く一般に公開するための制度です。

 

登記制度があることによって、不動産に関する取引に入ろうとする者は、当該不動産の状況を把握して取引の安全や円滑化を図ることに資することになります。
一方、所有者などの権利者の側から見ても、登記簿に自ら有する権利についての事項を明らかにすることによって、自己の権利を第三者に対して主張することが可能となります。

 

この不動産登記簿の証明書は、一定の手数料さえ払えば誰でも取得することが可能です。また、コンピュータ化された証明書は、法務局の管轄に関係なく、全国どこの不動産のものでも取得できます
(法務局で取得する場合は、いずれも1通600円。内容量が極端に多い場合には増額あり。)
法務局で取得した証明書は、法務局の登記官の認証印が付されていますので、公的な証明書として使用が可能です。

 

不動産登記簿には、掲載されている情報量の多少に応じて、以下の種類に分けられます。

 

全部事項証明書(登記簿謄本)
法務局の不動産登記簿に記録されている権利の変動などの履歴のすべてが確認できる証明書です。既に抹消された事項も表示されます。
通常、登記簿謄本といえばこの全部事項証明書のことを指します。

 

現在事項証明書
上記の全部事項証明書から、既に抹消された事項を除いて、現在効力を有する権利に関する事項が表示された証明書です。

 

一部事項証明書
例えば、多くの人が共有する土地などで、ある特定の共有者が有する権利に関する事項のみがピックアップして表示された証明書です。
全部事項証明書や現在事項証明書にすると証明書の分量が膨大になる可能性がある場合などに取得します。
正式には、「何区何番事項証明書」といいます。

 

所有者事項証明書
所有者(または共有者)の住所・氏名・共有の場合の持分のみを表示した証明書です。

 

閉鎖事項証明書(閉鎖登記簿謄本)
コンピュータ化や、土地の合筆、建物の滅失などによって既に閉鎖された不動産登記簿の記載事項についての証明書です。

 

※登記事項要約書

これは、登記簿に記載された登記事項の概要を記載した(つまり、要約した)書面です。上記の各証明書とは違って登記官の認証文言が付されていないため、証明書としては使えません

ただ、上記の各証明書よりも若干安価に取得することができ、簡易に登記簿の記載内容を確認することができます。

私たち司法書士の実務では、登記申請前の登記内容の確認用として取得するケースがあります。


上記のように証明書もいろいろ種類があるのに、なんでこんな中途半端な要約書なんてあるの?と不思議に思われた方も多いかと思います。

これは、登記簿が紙(簿冊式)だった頃にあった、登記簿の「閲覧」という作業の名残です。


かつては登記申請の前にお客様の権利取得の妨げとなるような登記(差押えなど)がなされていないかを確認するために、司法書士や事務所のスタッフが法務局まで出向いて簿冊式の登記簿の記載内容を実際に見ていたのです。


ところが登記簿がコンピュータ化され、法務局に紙の簿冊(バインダー)が置かれなくなりました。簿冊と違ってコンピュータの中身は直接見ることができないため、代わりに記録内容を紙に印刷して申請者に渡すことにした、というのが登記事項要約書なのです。


というわけで昔の閲覧の代替という位置づけなので、上記の各証明書と違って、不動産を管轄する法務局以外では取得することはできない、という不便さがあります。

 


登記簿の証明書は誰でも法務局で取得が可能ですし、最近ではインターネットでも取得が可能になっています。

また、はしもと司法書士事務所でも不動産の登記簿謄本の取得をお手伝いさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

 

注.一般によく「登記簿謄本」という言い方をしますが、これは登記簿が紙(簿冊式)だった時代の名残で、現在のコンピュータ化されたものは正式には上記のような「○○事項証明書」という名で呼ばれています。

ただ、登記簿謄本という言い方の方が分かりやすいため、今でも便宜上そう言う場合が多いです。