17.権利証を無くしてしまった時などの本人確認情報について

不動産を売買したり贈与したりする場合や、ローンの担保として(根)抵当権を設定する場合、登記申請にあたっては当該不動産の権利証(登記済証または登記識別情報)を提供する必要があります。

 

しかし、その権利証が、紛失や破損などの理由で提供できない場合の対処法については、6.権利証を無くしてしまった時はどうなるのか? その2 将来の対処法の項目でご説明しました。

 

今回は、上記項目でご説明した各方法の中で実務で最もよく用いられている、資格者代理人による本人確認情報の提供制度について詳しく見ていくことにします。

 

【具体的な本人確認情報の作成の流れ】

 

①司法書士が、登記の名義人様(売主様、担保設定者様など)と実際にご面談させていただき、以下の点について聞き取り調査をさせていただきます。

 

※この司法書士は、登記申請を代理する司法書士でなければなりません。つまり、本人確認情報の作成のみを代理することはできず、本人確認情報を作成した司法書士が登記申請をも代理する必要があります。

 

1.名義人様ご本人であること。
確認のための資料として、以下のとおり身分証明書をご提示いただく必要がありますので、ご準備をお願いいたします。(なお、ご面談時にコピーを頂戴いたします。)

 

◎以下の証明書であれば、1点以上の提示(実務上、1号書類と呼んでいます。)
※いずれも顔写真付の公的証明書で、氏名、住所および生年月日の記載があるものです。
■運転免許証、運転経歴証明書

■個人番号カード(マイナンバーカード)

注.ICチップの付いたプラスチック製のカードの方です。緑色の紙製の通知カードは不可です。

■住民基本台帳カード

■パスポート

■特別永住者証明書、在留カード

 

◎以下の書類の場合には、2点以上の提示(実務上、2号書類と呼んでいます。)
顔写真なし氏名、住所および生年月日の記載がある公的書類です。
■国民健康保険証、健康保険証、船員保険証、介護保険証、医療受給者証、後期高齢者医療被保険者証
■健康保険日雇特例被保険者手帳
■国家・地方公務員共済組合員証、私立学校教職員共済加入者証
■国民年金手帳
■児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、戦傷病者手帳

 

◎上記の2号書類が1点しかない場合、その1点に加えて下記の書類のうち1点以上の提示(実務上、3号書類と呼んでいます。)
■官公庁から発行、発給された書類その他これに準ずるもので、氏名、住所および生年月日の記載があるもの

 

※なお、これらの書類は、提示された時点で有効なものであることが必要です。つまり、有効期限切れの書類では身分証明書とは認められません。


2.名義人様が確かに当該不動産の所有者であること。
具体的には、不動産の所有権を取得された経緯や、権利証を紛失されたり、ないことの理由を聞き取って確認させていただきます。
その確認にあたりましては、下記の資料をそれぞれ拝見させていただくなどして確認しますので、ご準備をお願いいたします。(なお、ご面談時にコピーを頂戴いたします。)

 

◎権利の取得や設定を確認できる書類
■物件購入時の売買契約書、重要事項説明書、領収書
■建物新築時の請負契約書、建築確認通知書、検査済証、領収書
■登記原因証明情報の写し
■登記完了証
■遺産分割協議書、相続関係書類

などのいずれか

 

◎名義人様と不動産との関連性を確認できる書類
■固定資産税納税通知書または領収書
■公共料金(電気、ガス、水道、電話)の領収書

などのいずれか

②面談して聞き取り調査をした司法書士は、その内容をもとに「本人確認情報」という文書を作成します。

③この「本人確認情報」を権利証の代わりにして、登記の申請書に添付して法務局に提出します。

 

※なお、お客様におかれましては、この「本人確認情報」作成の費用として、所定の司法書士報酬を申し受けますので、よろしくお願いいたします。

 

もし不動産の名義を変えたり、ローンを設定される際に権利証がないことが判明しましたら、速やかにはしもと司法書士事務所までご連絡ください。

 

このように、取引の安全の確保と手続きの円滑な進行のために、人(お客様)・物(不動産)・意思の確認を徹底させていただいております。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

【ご注意】

 本ページの内容は、法令等に基づく一般論的な内容を、読者の方に分かりやすく解説することをめざしたものです。

 従いまして、個別具体的な事例におけるご質問には、当事務所にご依頼いただいておりますお客様を除き、回答致しかねますのでご了承ください。

 上記のとおり、本人確認情報の作成は、法律上も実際に登記を申請する司法書士が行う必要がありますので、ご留意ください。

 

 なお、個別具体的な事例におきましては、実際に申請書を提出される予定の管轄の法務局、または実際に登記手続をご依頼される司法書士の先生にご相談されますことをおすすめいたします。